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現役編集者が明かす、取材されるブランドになるために必要な心得とは?

2015.07.29:インタビュー
現役編集者が明かす、取材されるブランドになるために必要な心得とは?

こんにちは野田 (@KURUZE) です。

本日は「取材されるブランドになるために必要な心得」と題して、men’s FUDGE 副編集長の鈴木幹也氏とフイナム副編集長の山本博史氏をお迎えして座談会形式でお届け。

2人はかつて同じ雑誌で苦楽を共にしてきた同期。だからこそ聞き出せた「取材したくなるブランドに共通する項目」や「掲載率アップに必要なプレスの心得」とは?

鈴木幹也 (写真左)
men’s FUDGE 副編集長/  men’s FUDGE
"シンプルでさりげなく格好いい! "をスローガンに掲げるファッション誌「メンズファッジ」の副編集長。雑誌業界一筋16年。プライベートとビジネスの境目がないワークホリック。。。

山本博史 (写真右)
フイナム副編集長/  Houyhnhnm
2004年に創刊したウェブマガジン「フイナム」の副編集長。趣味はランニング。フイナム ランニング クラブ♡の副部長としても活動し、さまざまな大会にも参戦。ベストタイムは3時間47分、ハーフは1時間39分。

 

編集者が気になるポイントは、取材すべき独自の理由があるか?

 

―――まずは、取材やリースしたくなるブランドについて。何か共通することがあれば、是非教えてほしいんだけど。

山本 僕が言うのもおこがましいけど、圧倒的にクリエイション持ってるところは自然と注目しちゃいますよね。

鈴木 そうだね。独自性を持っているところには惹かれますね。

山本 デザイナーの強烈なパーソナリティが見えるブランドには、必ず展示会に足を運ぼうと思いますし、コレクションからマーケットに媚びようとしない姿勢が見えたりすると、純粋に感銘を受けるじゃないですか。

―――独自性の反面、部数を売っていく必要もあるわけで、そこはマーケットに合わせていく視点も求められるのでは?

鈴木 もちろん。コレクションブランドでいう「見せる」ところと「売る」ところじゃないけど、コンセプチュアルなものとして採算度外視で取り上げるべきものと、売るために必要なものはバランス取れば良いと個人的には思います。

山本 トレンドって世の流れなので、自然と目に入ってくるじゃないですか。そのうえでトレンドとどう向き合っているのか。

展示会って、そういった部分の捉え方を肌で感じることが目的と言えるかもしれないですね。たとえ売れなそうな物ばかりでも光るものがあるとグッと来ることもありますし。

鈴木 直接的に面識はありませんが、寝間着をベースにしたブランド( =PHINGERIN )とかね。

―――とはいっても、ただ単にトレンドから外れて独自の路線をいくという単純なものではないんだよね?

山本 トレンドとの距離感の取り方ですよね。迎合するのではなく、トレンドと個性の出し引きのバランスに長けているブランドは、巧いなと思いますし。

鈴木 『men’s FUDGE』に限って言うと、ベーシックが一番というコンセプトがあって無理にトレンドは追っていません。

僕らはWEB媒体の瞬発力には勝てないし、流行を追うだけならどこの雑誌でもできる。だから拾うべきはベーシックと絞っているんですけど、それはTシャツとジーパンっていう単純なものではなく、その人なりのベーシックとして伝わるものがあれば良いと思っています。

山本 そういう意味では、大阪のUNIONや福岡のFUJITOのような地方発のブランドが作るベーシックは、東京で作られるそれとは違う空気感を持っていますよね。

トレンドはどこにいても見えるけど、自分なりのベーシックって情報量の多い東京にいると見えづらいのかもしれない。今後、地方から独自性を発信していくのは一つのフックになりそうな気がします。

鈴木 後は読者が実際に着ることができる。そういう距離感にあるブランドやアイテムは探します。

いつ見ても変わんないカッコ良さってあると思うし、それがそのブランドのベーシックだと思うので。僕、ファッションはリアルが一番面白いって思っているので。

―――リアルって大事だよね。取材していると凄く伝わる。雑誌時代の話だけど、撮影のときに完璧に作り込んで絵を作るブランドってあるけど、どうしても「頑張ってます!」感が滲み出てしまう。

でも本当にリアルなブランドって、フラっとその辺で撮っても抜群にカッコ良いんだよね。HECTICとか何やっても絵になってたし。

鈴木 ブレてないからリアルなんだと思う。そういう意味ではWHIZって本当にカッコ良いよね。このご時世に15年やっていて、その間ずっ~と「らしさ」を残してる。

―――確かに! 僕、原宿業界の仕事から離れて以来、10年近くその界隈に顔を出せていなかった。それはストリートファションをまた盛り上げていくには、絶対にマーケティングスキルが必要だと思っていて、しばらくは修行に徹しようと思っていたこともあり。

でも独立して、また縁があり3月のショーに招待してもらったんだけど、昔のLUMPを思わせるかのように会場にフェンスがあって、しかも音楽はNITROやNUMB。「全然変わってないじゃん!」って、もの凄く嬉しかった。しかも実はアーカイヴショーだったという。

このご時世、しかもファッションショーという場所にも関わらず、インディペンデントな姿勢を貫き通すって本当に凄いことだなって。

山本 誰よりも下野さん( =WHIZデザイナー )が、WHIZのことを俯瞰して見えているんだと思います。デザインやプロダクトのことだけではなく、全国のディーラーはもちろん、お客様の顔まで把握できている。

だからこそ、ああいった畑違いかもしれないファッション的な表舞台に立っても、自分のスタンスで勝負することができる。

鈴木 下野さんの貫く姿勢は本当に凄いよね。最後に挨拶で出てきたときも一瞬だったでしょ。あれだけショーで自分の表現を出しているのに、人前ではペコって帰るぐらい。人柄が見えるよね。

着るか着ないかは別として、そこまで見えるブランドってやっぱり好きになる。

山本 地に足を付けて、ブランドとしての独自性とそれに伴う規模感まで、意識的に磨き上げてきたんだと思います。

―――取材やリースされるブランドになる秘訣は【取材される独自の理由】を持ち、それを発信することが大事ってことだね。

一同 そうだね。

 

キャラバンのポイントは、伝えることを絞って明確にすること

 

―――次はキャラバン( =主にプレス担当者が、自社の商品を持って編集部を回り商品をアピールする営業活動 ) について。

ブランドにいるとプレス担当者がキャラバンにいきなさいって言われるのを見かけるけど、それってどうなのかな?

編集ってもの凄く忙しいじゃない。僕自身、その貴重な時間を代理店や営業担当者が連れてきた、全く知らないブランドに時間を裂かれるのが苦痛だった経験があるから。

代理店からすると編集と合わせたという事実さえあれば、それがアリバイになるんだろうけど……。どうなの?ぶっちゃけ(笑)。

鈴木 確かにやみくもに何回も電話してくる。「この間も電話したんですけど、いつだったらいいですか?」みたいなのは正直困るかも。

モデルの売り込みの場合でいうと、men’s FUDGE は外人モデルしか使っていない。でも日本人モデルの売り込みにくる時点で「雑誌見て営業にきてるのかな?」って思ってしまう。でもキャラバンにはキャラバンで良いところもあって。

―――どんな?

鈴木 自分の守備範囲以外の新たな発見がある。

―――そんな発見あるの?

一同 たまーに(笑)。

山本 キャラバンに来るところって、自分の商品に自信がないところが多い気がします。

特に新規でお付合いするようなPR会社の場合は、これでもかと案件を持ってくる。でも、そのほとんどが「すみません、こんな物なんですが……」というスタンスでプレゼンされてしまうと、見ている僕らは一気に冷めてしまいます。

お互いに限られた時間を使っている以上は、ネタの選別も含めて的確にプレゼンしてもらいたい。その方がコミュニケーションもはかどるし。

鈴木 確かにそういう面はあるかも(笑)。でも事実、良いキャラバンをするブランドもありますよ。

例えば フイナムなら、自分たちのこのネタならハマるのでは?と見据えているプレゼン。

山本 なんなら媒体に合う企画まで提案してくれたり。先が見えると、僕らも前のめりになりやすい。

鈴木 自分たちの強みを明確にして「今日はここを売りに行く」って、伝えるべきことをしっかり組み立ててからキャラバンに出た方が効率的な気がします。

響くキャラバンって「うちのブランドってここが強みなんです!」っていう明確なメッセージがあるので。

―――なるほど。伝えるべき内容は絞らないと明確にならない。だからこそ、どんなニュースなのかキャッチ( =雑誌の見出しとなるキャッチコピー )を用意するくらいだと良いんだろうね。

伝えるべきことが特に決まってなく、ただ商品見て何か考えてくださいっていうのは、さすがに都合良すぎだよね(笑)。

鈴木 そう……だね(笑)。質問に対して一言で返せる武器を持ってきてほしい。こう伝えればメディアって取り上げるんじゃない?って計算していれば、キャラバンでの掲載確率は上がると思います。

 

日頃のコミュニケーションで差がつくニュースリリース

 

―――次は、目が止まるニュースリリースについて。昔は延々FAXが流れてきていたけど、今はメールだよね? その中で目に留まり掲載したいと思えるニュースリリースの特徴を教えてもらえると。

山本 細かい部分で言うと、引き継ぎがなくまだ面識も無いのに突然「BCCで失礼します」はスルーすることが多いかも。

―――なるほど(笑)。確かに失礼。

山本 あと大手セレクトショップの週一ぐらいで流れてくるメディア向けのメールマガジンがあるんだけど、それもスルーすることが多いですね。

鈴木 え!? そうなの? 俺見てるけど。

―――どんなメールなの?

鈴木 分かりやすく今月のコラボみたいなニュースに画像も付いていて、それをクリックすると画像が落ちてくるとか。

―――へぇ~。便利になったね。

鈴木 そこまでの丁寧さがあれば、やっぱり目を通すじゃない。

山本 丁寧なのはありがたいんですけど、各媒体に一斉送信だろうし、送信されたままだとコミュニケーションも生まれにくい。

むしろ一斉送信とは別で、一本電話をくれたり、媒体に合わせたとっておきのネタをこっそり教えてくれたりすると企画に繋がったりしますね。

すべてを打ち返すような速報型のWEBメディアなら一斉送信も有効だとは思いますが、フイナムのようなスタンスだと掲載に繋がらないことも多々あります。

鈴木 なるほど。何がいいんだっていうことね。そこは月刊誌とWEB媒体の違いかもしれない。

月刊誌は情報が多ければ多いほどいいネタを拾えるし、発売日に近いものを狙える。僕らはスピード感がない分、発売日に近いもので良いと思うものをなるべく選びたいので、ウィークリーで来ることは大歓迎です。

―――WEB媒体の基本はスピード感だから、一押しのニュースだけを1つ1つで送った方が良いんだね。

山本 そうそう。なおかつフォローの電話まであると、動かないわけにはいかなくなってくる。

鈴木 俺、唯一いいこと言いますけど(笑)。できるプレスさんは「ニュース情報はいつまで必要ですか?」って尋ねて、そこに合わせて情報提供してくれます。

山本 配信する側の心遣いが見えると、その関係性で掲載することって実際にありますからね。

―――でも毎回毎回「山本さん、これ載っけてくださいよ」は嫌だよね(笑) 

山本 もちろん。そればっかりはバランスだよね。

鈴木 結局は人付き合いだから、バランス感覚を持ってるプレスさんは強いと思います。

知らない人からメール届くのは正直キツイもん。その前に電話の一本でもあればいいんですけどね。

会ったこともない人からいきなり「掲載してください」ってメールが来ても、相手の顔も見えない上に関係性がない。最低限、名刺交換して顔付き合わせたことがある方だったら、いくらでも送ってもらって構わないんですけどね。

 

真摯な回答と手抜きの回答。一目瞭然のアンケート取材

 

―――最後にアンケート取材について。どうしてもアンケート取材をお願いするケースってあると思うけど、その返信がちゃんと記載されていると、それだけでまた取材したくなるって実際あるのかな?

鈴木 あるある。ちゃんと「丁寧に筋が見えるアンケート」と「力が入ってないアンケート」はすぐに分かります。

惰性で書いてると感じた部分はやっぱり省いてしまいます。でも、しっかり情報を書いてくれている部分からは、なにか拾えないかなって僕も真剣に向き合います。お互い歩み寄る姿勢は大事だと思うし、そうでなきゃダメだと思うから。

山本 良い記事にしたいメディア側と、良い記事にしてもらいたい取材相手。スキャンダラスなネタで揚げ足を取るわけではないので、たとえ面倒でもきちんと書いてくれるとありがたいですよね。揚げ足を取ろうとするメディアもありますけど。

鈴木 どっちが偉いとかじゃなく、ギブアンドテイク。良い情報をもらえれば僕らはしっかりと取り上げたいと思うし、それが誌面の強みにも繋がり、ブランドさんも多くの読者にリーチできるようになると思うんです。

―――では、具体的にどういう風に書けば良いのか分からないプレ……

店員さん 申し訳ございません!もう閉店の時間ですので、そろそろ……

一同 あっ!はい!申し訳ありません。今出ます!


と、ここで無念のタイムアップ。余談に華が咲いてしまい、あえなく閉店時間となってしまいました(苦笑)。

最後まで完走できずに申し訳ありません。お詫びに雑誌に掲載されるブランドの特徴をまとめておきます。

・編集者が記事にして伝えたくなる独自性を持つ

・自社の強みや伝えたいメッセージは絞り込んで明確にする

・編集者に宣伝するのではなく提案し、コミュニケーションをはかる ( 宣伝からコミュニケーションは生まれにくいが、提案からは生まれやすい )

・アンケートには真摯に答える ( 伝えることを明確にしていれば、自然と魂がこもるはず!)

もし「続きを!」という皆様からの熱い反響がございましたら、第二回目を開催したいと思います(笑)。それでは!

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野田 大介

野田 大介

株式会社ファナティック代表取締役
月刊誌Ollie magazineの編集者からキャリアをスタート。その後は、フリーライターとしてhoneyee.comやLightningなどでの執筆、複数のアパレル企業で商品企画、生産管理、店舗/卸営業、通販業務を歴任。現場の最前線で培った通販の運用実積に加え、メディア業界で培ったコンテンツ・マネージメント力、そして長年のアパレル経験と、アパレル通販を運営する上で必要な知識と現場経験の両面を網羅。趣味、というか生きがいは「買い物」

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