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O2Oと嫁の説得が鍵を握る高級時計の通販【前編】|買い物中毒のファッション通販アドバイザーのカートリスト

O2Oと嫁の説得が鍵を握る高級時計の通販【前編】|買い物中毒のファッション通販アドバイザーのカートリスト

グーグル・アナリティクスでは計測できない人間ドラマの始まり

こんにちは。買い物中毒のファション通販アドバイザーの野田(@KURUZE)です。

最近の買い物は、mita sneakersのニューバランスMT580 予約。new balance × HECTIC × mita sneakersという伝説のシリーズの幕開けとなった1stカラーが待望の復刻ということで、今から来年の到着が楽しみでしかたありません。

さて今回のブログは、1年半前という随分前の話で恐縮なのですが高級時計を通販したというお話です。きっかけは2年半前の独立に端を発するわけですが、独立という何の保証もない荒波の中、住宅ローンを30年以上残しながらも嫁という世界一のストッパーの制止を振り切り、新たなローンを組むという過酷なミッション。

そこには、高額商品を通販する際にユーザーが辿るリアルな意思決定プロセス、そして嫁を説得するための緻密な戦略の数々など、グーグル・アナリティクスでは計測できない幾多の人間ドラマが垣間みれる貴重な経験でした。通販担当者様には購入完了に至るまでのユーザーフロー事例として、是非ご一読いただければ幸いでございます。

 

今回のターゲットをご紹介

まず最初にご紹介したいのが今回のターゲット。「 OMEGA スピードマスター・ブロードアロー・コーアクシャルGMT Ref.3581.30」(以下、スピードマスター)というアナウンサーの入社試験に出てきそうな名前の時計。

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バンドは変えてあります。あしからず

既に黒い文字版の時計を持っていたので、爽やかな印象を持つ白い文字盤の時計をずっと狙っていました。この時計との出会いは中野の「ジャックロード」。恐らく5年から6年くらい前だったと思います。

青と赤で分けられた時刻、GMT専用針の縁取りなど、絶妙な差し色に目を奪われました。値段も40万前後だったと記憶しているのですが、他のクロノグラフと比べてもリーズナブルだったので即ブックマーク。とはいっても、そうやすやすと買える代物ではありません。ふとしたときに思い出す、ずっとそんな間柄でした。

転機が訪れたのは2014年の6月。元々持っていた黒い文字版の時計につけていた革バンドが5年経ち、さすがにクタッてきたので新たに作りなおすことにしました。

いつも知り合いを介して発注させていただいており今回もお願いしようと革を取り寄せてみるものの、どーしても色を決めきれません。元々黒のクロコダイルを使用していたのですが、少し気分を変えたいという思いに加え、時計がダイバーウォッチという2つの理由からダークネイビーに心が惹かれます。でもやはり黒も捨てがたい……正直、この2色にそこまで色味の差はないのですが、結果として2つ作ってしまうことに(笑)。

そうなると人間面白いもので、空の器が目の前にあるとなんとかして埋めようという欲求が沸いてきます。いつしかスピードマスターは、ふとしたときに思い出す漠然とした存在から、果たすべき具体化な目標に変わっていました。この瞬間、僕の中でスピードマスター購入プロジェクトがキックオフしたのです。

 

ステップ1 価格と在庫状況の調査/安心できるお店選び

まずは価格調査ということで、様々な時計屋を検索。値段を見ると最安値で58万4000円……随分と値段が上がっています。

またそのショップもカートボタンが「お取り寄せ」となっているので電話で問い合わせてみると、買い付けの際に目的の商品を見つけ出すことができれば、納期とその時点での為替の影響などを考慮した正確な価格の連絡が入るので、それに納得した場合は買い付けが行われるということでした。

見つからない場合、または納期や価格に納得がいかない場合については、買い付けは行わず当然費用もかからないという仕組み。しかし異常なまでにせっかちな性格なので、いつ入るか分からないものを待つという時間が想像できず、仕方なく他の店をあたることに。

次に訪れたのは「価格.com」。最安値の店鋪を探すと49万9000円の「カメラのキタムラ」とありました ( =現在は登録情報なし)。

しかも20回までは分割手数料が無料。写真プリントのイメージしかありませんでしたが、口コミを調べてみると問題なさそうですし、なにより東証2部上場企業という信用もあるのでここで購入することに決めました ( 今思うとスコットのクラアイントということで、それだけで安心なのですが )。

 

ステップ2 嫁の説得/最大の関門を突破する4つの手順

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購入することを決めたといっても、それはあくまで自分の中だけの話。既婚者には嫁(もしくは夫)の決済という最大の難関が立ちはだかります。ここを突破することができればゴールしたも同然。その為にも以下の手順をご参考ください。

手順1. 何か当てはまりそうな記念を探す

私の場合は「独立記念」でした。すでに独立から1年経っていたのですが、ここは「こじつけ」で構いません。重要なのは人生の節目や自分へのご褒美という【 今回だけは特別 】という演出が、交渉の際の武器となります。

転職や昇進といった環境の変化があったときや、30歳、40歳、50歳といった年齢の節目はチャンス到来です。記念日から多少の前後があっても良いので、こじつけられるイベントを探しておいてください。

その際のポイントとしては、ポジティブな要素で自分に関連する出来事を探すということです。間違っても結婚10周年など、夫婦や嫁(もしくは夫)のことに関連付けてはダメです。逆に時計を買ってあげる必要がでてくるので、自分の番はお預けとなります。

 

手順2. 段々と商品との接触を強めていく

これは単純接触効果を狙ったものです。人は何かに繰り返し接し続けると、好感度が高まるという効果です。

これを利用して私がとった方法は、まず家のiPadで時計のページを見るようにします。ブランドサイトや通販サイト、時計にまつわるネット記事や個人のブログなど、空いた時間にひたすら見続けます。

誰しも欲しいものを眺めているときはとても楽しい時間だと思うので、全く苦にならないと思います。しかも徹底的に調べることで知識も深まっていきますし、何よりこの知識は説得の段階で重要な役割を果たしていきます。

ひとしきり調べ終えたときには、ある程度の時間が経っているハズです。おそらく嫁(もしくは夫)は、そんな姿を横目に見ていたと思うので、これで下地は完了です。次の段階へ移りましょう。

次のポイントとしては、iPadを終える際【 目的の商品ページで終了させる 】ということです。こうすることで相手がiPadを使う際にブラウザを開くと、その商品が1番最初に現れます。ここで相手はその商品について認知するのですが、その際に下地が利いてきます。

下地なしでここからスタートしてしまうと「こんなの何見てんの!買えるわけないでしょ!」と頭ごなしに否定される可能性が高いです。その理由は、そもそも時計に【 興味がないから】。

しかし何日も熱心に見ている姿を横目に見た後だと「あんなに熱心に調べていた商品はコレなんだ」という具合に少し興味を持ちます。前者は興味の対象が【物】だけでしたが、後者の場合では【 自分にとって1番身近な人が、何日も何日も熱心に調べている物 】というストーリ-が頭をよぎるからです。

ここまで来たら次は仕上げ。実際に実店鋪で商品に触れてもらいます。

当然、目的の商品があるにこしたことはないのですが、ここでの主な目的な「時計に触れてもらう」ことにあるので、絶対にスピードマスターがある必要はありません。もちろんお店に行く際には、時計を見に行こうとは言いません。「たまたま店があった」もしくは「あぁ、そういえばこんな店あったね」という【 さりげなさ 】が重要なポイントです。

あとは目的の店の前を通りかかったら、無邪気に目を輝かせて商品を眺めてください。心配ご無用。何もしないでも、あなたの目は輝きを放っているハズです。

 

手順3. アンカリング効果を利用する

アンカリング効果とは、特定の数値や情報が基準(アンカー)となり、その後の判断に影響を及ぼす心理傾向のことを指します。例えば1万円のワンピースがあった場合、通常であればそのワンピースが1万円を出すに相応しい素材やデザインなのかといった基準で購入の判断を下します。

しかし通常価格が2万円のワンピースが、今なら特別価格で1万円と表示することで、先に表示された通常価格の2万円という金額がアンカーとして働き、50%OFFで1万円も値引きされたお得なワンピースとして認知します。これにより購入の判断軸が、素材やデザインから価格や割引率といった数字に移っていきます。

今回のケースでは100万円前後の白い文字盤のロレックス・デイトナをアンカーに設定し、店鋪で食い入るように眺めました。正直よく分からない人には似た様な時計に映ると思います。でも値段は倍違います。この布石があることで、49万9000円の時計を買うと切り出したときに100万円のアンカーが働き「半額」と認知してくれるようになります。

 

手順4 出費ではなく将来への投資であるとアピール

さぁいよいよ最後の準備です。本人への直談判の際に、必ず気をつけたいのは【出費ではなく投資】ということをしっかり理解してもらうことです。私の場合「スーツを着る機会も増えるし、クライアントと接する際に爽やかな印象を持っていただくには、白い文字盤の時計が必要」としました。

黒より白の方が印象が良いという明確な根拠はありませんが、一般的に言われている色の印象から引用しました。仕事や自己実現のために今どうしても必要なものであり、それを手に入れることでより大きなリターンが見込める。だからこそ手に入れねばならないということを、しっかりとプレゼンできるように準備してください。

以上の手順を整理しますと、

いきなり商品を見せるのではなく、雑誌やネットなどから徐々に接触を初めていき ( = 手順2 )

実店舗で商品を見る際には目的のものより高いものを見せておく。 ( = 手順3 )

交渉の際には【 何かの記念ということで今回だけ特別 】であり ( = 手順1 )

あくまで【出費ではなく投資】であるということをアピールする ( = 手順4 )

となります。
それでは今回のスピードマスターを一例に、理想的な交渉のやりとりを紹介します。

自分「あのさぁ、仕事でちょっと時計が必要になってきたんだよね」

嫁「なんで?持ってるじゃん」

自分「いやさぁ~、あの時計って文字盤が黒じゃない。やっぱ初めての方には白の方が印象が良くて」

嫁「 そんなの変わらないって」

自分「いや変わるって全然!白い時計してればクラアイントの方にも受けも良いだろうし、仕事増えると思うんだよねぇ」( =投資アピール )

嫁「そんな甘いわけないでしょ」

自分「絶対増えるって!しかも独立した記念に何も買ってないし」( =記念アピール )

嫁「だからって前に見てたやつでしょ? 高すぎだから。無理だよ」( =単純接触効果 )

自分「そりゃ欲しいのは100万くらいするけど、さすがにそれは無理だよね。でもオメガでも良いのがあってそっちなら半額なんだよね」

嫁「いくらなの?」

自分「50万弱。しかも20回までは分割手数料が無料だから、月々2万5000円くらい」( =アンカリング効果 )

嫁「でも欲しいのじゃないんでしょ?それに50万もバカらしいじゃん」

自分「いやーなんか良く調べてたら、こっちの方が欲しくなってきて。この色使いとかトムブラウンのスーツに合いそうだし。しかもコーアクシャルっていって、これがあると10年くらいはメンテナンスいらずだから、結果的に安く済むんだよね。きっちり自分で払うしガンガン仕事するからさぁ」( =トドメに得た知識をたたみかける)

嫁「もう勝手にすれば 」

 

まぁ実際にはこんなにトントン拍子とはいかずに粘りも必要になると思います。しかし気合い + 根性だけではなく周到に準備を重ねることで、交渉成立の可能性は高くなると思います。

もちろん時計以外にも応用可能ですので、是非お試しください。

次回の【後編】では、いよいよ購入のステップに入ります。お楽しみに!

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野田 大介

野田 大介

株式会社ファナティック代表取締役
月刊誌Ollie magazineの編集者からキャリアをスタート。その後は、フリーライターとしてhoneyee.comやLightningなどでの執筆、複数のアパレル企業で商品企画、生産管理、店舗/卸営業、通販業務を歴任。現場の最前線で培った通販の運用実積に加え、メディア業界で培ったコンテンツ・マネージメント力、そして長年のアパレル経験と、アパレル通販を運営する上で必要な知識と現場経験の両面を網羅。趣味、というか生きがいは「買い物」

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